紅茶とともに過ごすゆったりとした時間──イギリスのティータイムは、日常を豊かに彩る大切な文化のひとつです。特に「クリームティー」と呼ばれるスタイルは、紅茶にスコーンとクロテッドクリームを添えた、シンプルながらも贅沢な楽しみ方として親しまれています。
本記事では、イギリスに根付くティータイムの歴史や文化、クリームティーの魅力、さらには紅茶との相性やおうちで楽しむ方法まで、丁寧に解説していきます。
伝統あるイギリス流のティータイムを、ぜひ暮らしに取り入れてみませんか?
イギリスのティータイム文化とは
イギリスにおけるティータイムは、単なる飲み物の時間を超えた、暮らしの中の大切なひとときです。
紅茶を楽しみながら、心を落ち着けたり、家族や友人と交流を深めたりするこの文化には、長い歴史と豊かな意味が込められています。
ティータイムの歴史
イギリスでティータイムが広まったのは、紅茶が特別な飲み物として人々の間に浸透し始めた頃からとされています。
次第に、紅茶を楽しむための時間が設けられるようになり、「アフタヌーンティー」や「クリームティー」といったさまざまなスタイルが生まれました。
やがて、午後のひとときに紅茶と軽食を楽しむ習慣が広く定着し、イギリスならではのティータイム文化が築かれていきました。
ティータイムの習慣と重要性
イギリスでは、ティータイムは単なる飲食の時間ではなく、リラックスし、家族や友人とつながる大切な時間と考えられています。
午後のひとときに紅茶と軽食を楽しむことで、心に余裕をもたらし、一日のリズムを整える役割も果たしています。
特別なセレモニーというよりも、日常生活の中に自然に溶け込んでいる点が、イギリスのティータイム文化の魅力です。小さなひとときにこそ、豊かな時間の価値を見出す──そんな精神が息づいています。
ティータイムの楽しみ方
ティータイムを楽しむ方法に特別な決まりはありませんが、紅茶を丁寧に淹れ、お菓子や軽食とともに楽しむのが一般的です。
スコーンやサンドイッチ、ケーキなどを添えると、より本格的なティータイムの雰囲気を味わうことができます。
また、好きな音楽をかけたり、お気に入りのティーカップを使ったりすることで、自分だけの特別なティータイムを演出するのもおすすめです。静かに過ごすもよし、親しい人と語らいながら楽しむもよし。
イギリスのティータイム文化は、自由で心温まる時間を大切にしています。
クリームティーとは
クリームティーは、イギリス南西部のデヴォン州やコーンウォール州にルーツを持つ、紅茶とともにスコーンを楽しむスタイルのひとつです。
シンプルでありながら、贅沢な味わいを堪能できることから、現在ではイギリス全土で広く親しまれています。
ここでは、クリームティーの起源や、欠かせないスコーンとクロテッドクリームについて詳しくご紹介します。
クリームティーの起源
クリームティーの起源には諸説ありますが、最も有力とされているのは、イギリス南西部に伝わる伝統から生まれたという説です。
農家で作られたクロテッドクリームを焼きたてのスコーンにたっぷり塗り、紅茶とともに楽しんだのが始まりとされています。
この習慣は次第に広まり、ティールームやカフェで提供されるようになり、今日のクリームティー文化が育まれていきました。紅茶とスコーン、クロテッドクリーム、ジャム──この4つが揃えば、立派なクリームティーの完成です。
クリームティーに使うスコーン
クリームティーに欠かせないスコーンは、外側がほんのりサクッと、中はふんわりとした食感が特徴です。甘すぎず、紅茶やクリーム、ジャムとの相性を考えて作られるため、主張しすぎないやさしい味わいに仕上げられています。
イギリスでは、スコーンは温かい状態で提供されることが多く、クロテッドクリームやジャムをたっぷりのせていただくのが定番です。家庭で作る場合も、焼きたての香ばしさを楽しむことがクリームティーの醍醐味と言えるでしょう。
クリームティーに欠かせないクロテッドクリーム
クリームティーの主役ともいえる存在が、クロテッドクリームです。クロテッドクリームは、低温でじっくり加熱した生乳から作られる、なめらかでコクのあるクリームで、バターのような濃厚さと、クリームらしい軽やかさを併せ持っています。
クロテッドクリームはスコーンにたっぷりのせ、さらにその上にジャムを重ねるのがイギリス流の楽しみ方。逆に、ジャムを先に塗り、その上にクロテッドクリームをのせるスタイルもあり、地域や好みによってさまざまな楽しみ方が存在します。
このふたつの味わいが重なることで、シンプルなスコーンが極上のデザートに生まれ変わります。
紅茶とクリームティー
クリームティーに欠かせないのが、紅茶との組み合わせです。スコーンやクロテッドクリーム、ジャムと調和する紅茶を選ぶことで、ティータイムの楽しみがぐっと深まります。
ここでは、クリームティーにぴったりの紅茶や選び方についてご紹介します。
おすすめの紅茶
クリームティーに合わせる紅茶としておすすめなのは、ミルクティーに向いたしっかりとした味わいの紅茶です。たとえば、アッサムやセイロンなど、コクがありながらも飲みやすいタイプの紅茶がよく合います。
また、香り高いダージリンも人気があります。特にセカンドフラッシュのダージリンは、スコーンのやさしい甘さとバランスよく調和し、上品なティータイムを演出してくれます。
紅茶の種類と特徴
紅茶にはさまざまな種類があり、それぞれに個性があります。たとえば、アッサムは力強くまろやかな味わいが特徴で、ミルクを加えても風味を損ないません。セイロンは明るい水色とすっきりとした飲み口が魅力で、ストレートでもミルクティーでも楽しめます。
一方、ダージリンは華やかな香りと軽やかな味わいが特徴で、ストレートティーとして飲むとその個性がより際立ちます。
ティータイムの雰囲気や、スコーンの味わいに合わせて紅茶を選ぶと、より一層豊かな時間を楽しめます。
紅茶に入れるミルクやジャムの選び方
クリームティーに合わせる紅茶には、ミルクを加えるスタイルがよく合います。ミルクはあたためすぎず、常温に近いものを用意すると、紅茶の風味を損なわずにまろやかさをプラスできます。
また、ティータイムにはジャムを紅茶に加えることは基本的にありませんが、スコーンと一緒に味わうジャムの種類によって、紅茶の選び方を工夫するのもおすすめです。
たとえば、甘みの強いストロベリージャムには、渋みが穏やかな紅茶を、爽やかなラズベリージャムには、香り高いダージリンを合わせると、味わいのバランスが整います。
アフタヌーンティーとの違い
クリームティーとアフタヌーンティーは、どちらもイギリスを代表するティータイム文化ですが、スタイルや内容には明確な違いがあります。
ここでは、それぞれの特徴を比較しながら、違いについて詳しくご紹介します。
アフタヌーンティーのスタイル
アフタヌーンティーは、午後のひとときに軽食とともに紅茶を楽しむスタイルです。通常、三段重ねのティースタンドに、サンドイッチ、スコーン、ケーキやタルトなどのスイーツが美しく並べられ、ゆったりとした時間を過ごすための演出が施されています。
服装にも少しフォーマルさが求められる場面もあり、特別な日やちょっとしたお祝いにもぴったりのスタイルです。
メニューの違い
クリームティーのメニューは、紅茶とスコーン、クロテッドクリーム、ジャムと非常にシンプルです。一方で、アフタヌーンティーはバリエーション豊かな軽食とスイーツが揃い、食事の要素がより強いのが特徴です。
クリームティーは、ティータイムの中でもより手軽で、短時間でも楽しめるスタイルと言えるでしょう。アフタヌーンティーは、食事とお茶をじっくり堪能する、少し贅沢なティータイムです。
両者の楽しみ方の比較
クリームティーは、気軽に紅茶とスコーンを楽しみたいときにぴったりのスタイルです。短い休憩時間や、午後のリラックスタイムに最適です。
一方、アフタヌーンティーは、ゆっくりと時間をかけて、豊かな食事とともに紅茶を楽しむ特別なイベントとして位置づけられています。友人との集まりや、自分へのご褒美のひとときにおすすめです。
それぞれのシーンに合わせて、クリームティーとアフタヌーンティーを使い分けることで、より充実したティータイムを楽しむことができるでしょう。
クリームティーの食べ方とマナー
クリームティーは、紅茶とスコーンを気軽に楽しめるスタイルですが、より豊かに味わうためには、いくつかの基本的なマナーや作法を知っておくとよいでしょう。
ここでは、スコーンの食べ方やクロテッドクリームとジャムの使い方、ティータイム中の振る舞い方についてご紹介します。
スコーンの正しい食べ方
スコーンは、手で水平に半分に割って食べるのが一般的なスタイルです。そのままかじるのではなく、手で上下に分けたあと、それぞれにクリームやジャムを塗っていただきます。
一度に大きくかぶりつくのではなく、小さくちぎりながら、少しずつ味わうのが上品な食べ方とされています。
ゆっくりと紅茶とともに楽しむことで、スコーンのやさしい風味がより引き立ちます。
クロテッドクリームとジャムの使い方
クロテッドクリームとジャムをスコーンに塗る順番には、地域によって違いがあります。デヴォン式ではクリームを先に、コーンウォール式ではジャムを先に塗るのが一般的です。
どちらの順番でも正解ですが、クリームとジャムをたっぷりと塗りすぎず、適量をのせることで、紅茶とのバランスを保ちながら楽しむことができます。
また、スコーンに直接ジャムやクリームを何度もつけ足すのではなく、各自の皿に取り分けてから使うのが、スマートなマナーとされています。
ティータイム中のマナー
クリームティーの場では、リラックスしながらも丁寧な所作を心がけると、より心地よいひとときを過ごすことができます。
カップはソーサーごと持ち上げず、カップだけを持って飲むのが基本です。また、紅茶をかき混ぜるときは、音を立てずに静かにスプーンを動かし、使い終わったスプーンはカップの中に戻さず、ソーサーに置きます。
小さな所作にも気を配りながら、ゆったりとした気持ちで紅茶とスコーンを楽しむ──それがクリームティーの魅力を最大限に引き出す秘訣です。
おうちで作るクリームティー
おうちでもクリームティーを楽しむことができれば、日常にちょっとした特別感をプラスできます。ここでは、クリームティーの作り方と、必要な道具、そしておうちティータイムをより楽しくする工夫をご紹介します。
クリームティーの作り方
自宅でクリームティーを用意する際には、基本のセットを揃えましょう。まず、温かいスコーンを用意し、クロテッドクリームとジャムを添えます。スコーンは市販品を温めてもよいですが、手作りすれば焼きたての香ばしさをより楽しめます。
紅茶は、好みに応じたしっかりめの味わいのものを選び、丁寧に淹れましょう。ミルクを添える場合は、紅茶を注いでから少量加えると、なめらかな味わいになります。
手作りスコーンのレシピ
クリームティーにもぴったりな、基本のスコーン手作りレシピをわかりやすくご紹介します。
材料(約8個分)
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薄力粉 250g
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ベーキングパウダー 小さじ2
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砂糖 大さじ2
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無塩バター 60g(冷やして角切り)
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牛乳 120ml(+塗る用に少し)
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塩 ひとつまみ
※お好みでバニラエッセンスを数滴加えてもOKです。
作り方
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下準備をする
オーブンを200℃に予熱します。
薄力粉、ベーキングパウダー、塩を合わせてふるいにかけます。 -
バターを粉に混ぜる
ふるった粉類に冷たいバターを加え、指先でバターをつぶしながら、さらさらのそぼろ状にします。 (ポロポロとしたパン粉のような状態を目指します) -
牛乳を加えてまとめる
砂糖を加え、さらに牛乳を少しずつ加えながら、生地をまとめていきます。
べたつく場合は、粉を少し足して調整してください。 -
生地をのばして型抜きする
台に打ち粉(薄力粉)をし、生地を2cmほどの厚さにのばします。
丸型の型(直径5〜6cm)で抜きます。型がない場合は、コップでも代用できます。 -
焼く前の仕上げ
天板にオーブンシートを敷き、型抜きした生地を並べ、表面に牛乳を軽く塗ります。
(ツヤよく焼き上がります) -
焼成する
200℃のオーブンで約12〜15分、うっすらきつね色になるまで焼きます。 -
できあがり
焼きたてはもちろん、少し冷めても美味しく楽しめます。
クロテッドクリームやジャムを添えて召し上がれ。
このレシピなら、シンプルでしかも簡単に、香ばしくやさしい味わいのスコーンが完成します!
必要な道具と材料
おうちでクリームティーを楽しむために必要なものは、意外とシンプルです。
- スコーン(手作りまたは市販品)
- クロテッドクリーム(市販品)
- ジャム(ストロベリーやラズベリーがおすすめ)
- 紅茶(アッサム、セイロン、ダージリンなど)
- ティーポットとティーカップ
- 小皿(ジャムやクリームを取り分けるため)
これらを揃えるだけで、手軽に本格的なクリームティーが楽しめます。
おうちティータイムの楽しみ方
おうちティータイムをさらに豊かにするためには、ちょっとした工夫を加えてみましょう。お気に入りのティーカップやテーブルクロスを使ったり、季節の花を飾ったりすると、気分がぐっと盛り上がります。
また、静かな音楽を流したり、読書のお供にするのもおすすめです。大切なのは、自分だけの特別な時間を丁寧に味わうこと。紅茶とスコーンを片手に、心地よいひとときを過ごしてみてください。
まとめ
イギリスのティータイム文化は、単なる飲食の時間を超え、日常にやさしい潤いと豊かさをもたらしてくれます。なかでもクリームティーは、紅茶とスコーン、クロテッドクリーム、ジャムというシンプルな組み合わせながら、心を満たす贅沢なひとときを演出してくれます。
紅茶を淹れ、スコーンにクリームとジャムを添えて、一杯の紅茶とともに過ごす時間── それは、忙しい日常のなかに小さな幸せを見つけるための素敵な習慣です。
ぜひ本記事を参考に、おうちでも気軽にクリームティーを楽しみ、イギリス流のティータイムを暮らしに取り入れてみてください。きっと、心がほっと温まる時間が待っています。